朗読配信サービス、浸透するか

米国市場と比べると、日本でオーディオブックは流行らない…そんな常識をAudibleが覆そうと動き出した。米Amazon.com傘下でオーディオブック制作・配信を手掛けるAudibleは11月16日、宮沢りえ朗読の「雨ニモマケズ」、糸井重里朗読の「小さいことばを歌う場所」の配信を開始した。日本人向けのコンテンツを取り上げた、オーディオブックの認知度向上につなげる方針だ。
「Audible」はビジネス書や小説、落語、童話、ライトノベルなどの朗読音声が月額1500円で聞き放題になる定額制サービス。1995年に米国で創業し、2008年にAmazonに買収された。世界で25万タイトル以上のコンテンツを配信し、全世界に数百万人のユーザーがいるという。
日本では今年7月に開始。オーディオブックは海外ほど市民権を得ておらず、認知度は低い。同社は日本人になじみ深い「雨ニモマケズ」を取り上げ、「何度も読んだはずなのに、朗読では”新しい物語”に聞こえる」という体験を感じてほしいという。
糸井重里がWEBさいと「ほぼ日刊イトイ新聞」に掲載した原稿をを抜粋した「小さいことばを歌う」も同時配信。糸井さんは「文字がイラストに近いなら、音声は”歌”に近い。文字と違って読み飛ばせないので、否応なく時間がかかり、印象に残りやすい」とコメント。「この忙しい時代に心地のいい”じれったさ”を与えてくれるコンテンツではないか」と話す。
オーディオブックの利用シーンは、通勤・通学の時間が一般的と言われる。車社会の米国では、オーディオ機器の持ち運びに困らず、早期から市場が形成された一方、公共交通機関が発達する日本ではさほど浸透していない。
こうした見方に対し、同社の宮川ともみビジネスフェア・コンテンツ部長は、Audibleが事業展開に成功したイギリスを引き合いに出し、「日本とイギリスの平均通勤時間は約40分と同程度で、公共交通機関を利用する場面も多い。日本市場にも可能性はある」と反論する。
スマートフォン向けの音楽配信サービスが普及し、オーディオ機器を持ち運ぶ必要がなくなったことも市場の機運を高めている。「むやみにコンテンツの本数を増やさず、質を重視したラインアップを取りそろえ、オーディオブックを知らなかった人に良さを分かってもらえれば」と宮川部長は話す。忙しい現代社会だからこそ、朗読に耳を傾ける時間が必要なのかもしれない。